自然界では野生動物が思わぬ形で同胞以外の動物を保護するケースが見受けられる。ワニに襲われたカバをヌーが助けたり、インパラを助けるカバ、子ギツネを救おうとしたライオンなど、弱肉強食や自然淘汰だけでは語りきれない別の力が働いているようだ。
先月南アフリカにて、ライオンに囲まれたゾウの孤児がバッファロー(水牛)の群れに命を救われる出来事があった。
母親の助けもないままたった1匹で絶望的な状況にあった幼いゾウだが、意外な助っ人の登場で窮地を脱した。
幼いゾウを狙うライオンの群れを発見
これは、先月1月末に南アフリカのクルーガー国立野生公園を訪れたジル・マシューさんが同行者と目撃した光景だ。
ジルさんは、水場にいたライオンたちが何かを狙っている様子に目を留め、その群れが近くの草むらを歩くたった1頭の小さなゾウを待ち伏せしていることに気づき愕然とした。
囲まれた赤ちゃんゾウのところに現れたのは・・
あんな小さなゾウの子が放置されているわけがない。きっとすぐに母親が助けに来るはず・・
祈るような気持ちで見守っていたものの、不運な赤ちゃんゾウはあっという間にメスライオンに囲まれてしまった。
なすすべもなく横たわってしまった赤ちゃん。もはや逃げ場もなく状況は絶望的だった。あの子はあのまま餌食になってしまうんだろうか・・・と思っていたその時。
騒動に気づき、水場からバッファローの群れが割り込んできた。
そこにライオンの姿を見たバッファローの群れ。すると先頭の1頭が突進して子ゾウを襲うライオンを威嚇し始めたのだ。
一頭、また一頭と集まってくるバッファロー。これだけのバッファローに囲まれたのではライオンでもかなわない。ライオンたちは恐れをなして去っていく。
逃げ場ができた赤ちゃんはすぐに立ち上がると全速力で駆け出した。
ライオンたちを蹴散らしたバッファローは、その後も警戒しながら、必死に駆ける赤ちゃんゾウを先導するように走ったり、見送ったりしていた。
その後、絶体絶命のところで脱出した赤ちゃんゾウは水場に到着し、ゾウの群れと合流したようだ。
厳しい自然界ではこういった奇跡が稀に起きることがある。だがそれは、われわれ人間が確認できた場合だけであって、もしかしたらもっと多いのかもしれない。
それでも現実は残酷で
実際のところバッファローの群れがどんな気持ちでいたかはわからない。だが、彼らのおかげで幼いゾウが助かったのは事実だ。
しかし、悲しいことにこのゾウは最終的には15頭ほどのライオンの群れに襲われて命を奪われてしまったそうだ。幸運に助かった命が無残な形で奪われるのもまた野生の世界なのだろう。